「Traces of Life -生きものが残した木のかたち-」展は、カリモク家具株式会社主催によりKarimoku Commons Tokyoにて開催されました。本展示では、企画から展示ディレクション、空間構成、展示品のデザインまでを一貫して手がけています。
森での原体験から見出した「木を生きものとして捉え直す視点」と、カリモク家具が長年にわたり木の命と向き合ってきた姿勢に呼応するかたちで、本展示を構想しました。虫食い跡、節、曲がり、変色など、木に刻まれた痕跡を欠点ではなく、生きものや環境とともに過ごしてきた時間の証として捉え直しています。木に刻まれた痕跡を新たなかたちとして提示することで、素材への新しい価値を見いだす試みです。
制作にあたっては、カリモク家具の担当者の方と工場の職人の方々と対話を重ねながら、従来は扱いづらいとされてきた木材の可能性を探りました。さらに、素材の背景や物語を知ることで視点が広がる要素を展示空間に組み込み、造形と文章の両面から木の個性を体験できる構成としています。
本展では、節や傷が少なく木目の整った木を「A材」、虫食い、節、曲がり、変色など、これまで扱いづらいとされてきた木を「ユニーク材(U材)」と定義し、同じ樹種で異なる特徴をもつ木を半々に組み合わせたオブジェを制作しました。それぞれに異なる美しさがあるという前提のもと、ユニーク材の個性や魅力がより際立つ展示構成としています。
展示クレジット
主催|カリモク家具
企画・展示ディレクション・デザイン|辰野しずか(Shizuka Tatsuno Studio)
アートディレクション|desegno ltd.
編集・執筆|曽田真菜
テクニカルディレクション・施工|ルフトツーク
協力|和信化学工業株式会社、DESIGNTIDE TOKYO 2025 実行委員会
写真|Masaaki Inoue, Bouillon
“木はずっと、生きものとともに生きてきた。
その記憶をいま、静かに見つめ直す。
昨年、生まれて初めて木材が育つ森に入り、森や木に関わる方々の話を伺いながら、生きている木々を目にしました。木材として使われる多くの木が50年を生きてきたと聞き、私よりも年長の木々は、この半世紀をどのように感じ、どんな時間を過ごしてきたのだろうと想いを馳せました。
私たちが手にする木製品に使われているのは、森の中のほんの一部です。真っ直ぐな木もあれば、曲がりや傷、欠けを持つ木もあり、さまざまな個性が共存しています。木は気候や土壌、生きものとの関わりの中で育まれてきましたが、見た目や加工の難しさなどから、扱いづらいとされる木も多くあります。
しかし、整った木だけが「良い木」なのでしょうか。
木の形や痕跡は、単なる欠点ではなく、生きものたちと共に過ごした時間を映しています。生命の営みが刻まれたアートのようにも感じられ、人の手が加わらずとも、こんなにもユニークなのかと、はっとさせられます。自然の力が生み出すテクスチャーや形には、偶然がもたらす美しさがあり、それは唯一無二の価値です。
カリモク家具では、木材に新しい価値を見出すため、虫食い、節、曲がり、変色など、これまで扱いづらいとされてきた木をユニーク材などと呼び、長年ストックしてきたと伺いました。その誠実な姿勢に深く共感し、森で感じた想いとも重なります。カリモク家具の加工技術と専門家の知識のもと、まだ木と向き合って日の浅い自分なりの視点で、素材の可能性を実験し、探求する中でこの展示が生まれました。
ぜひ、木に宿る美しさや、自然がつくり上げたかたちを感じ、使い方を想像してみてください。そして、日々の暮らしの中で手に取る木製品が、「共に生きてきた時間の記憶」として心に残れば幸いです。
辰野しずか”